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ラヴェル 「鏡」

NESSAGE

モーツァルトのクラビコードとピアノフォルテ

ラヴェル「鏡」楽譜

今日は今、♪阿部裕之先生♪にレッスンをして頂きながら、私が取り組んでいるラヴェル「鏡」について書きます。 「鏡」は抜粋でも良く弾かれる作品ですが、全曲弾きますと30分くらいかかる大曲です。 19日イヴ・アンリ教授にもレッスンをして頂くことが出来、私の中で新たな活力が湧いている作品です。

作曲をしたモーリス・ラヴェル(1875~1937)はパリ音楽院でフォーレに師事したフランスの作曲家です。 ドビュッシーと並んで印象主義の代表の作曲家のように言われますが、古典的で理知的な形式観も持ち少しドビュッシーとは異なる面もあります。

「鏡」ラヴェルが30歳の時の1904年から1905年にかけて作曲された作品で、5つの曲からなるピアノのための組曲です。

第1曲 Noctuelles (蛾)~詩人レオン=ポール・ファルグに献呈

第2曲 Oiseaux tristes (悲しい鳥)~リカルド・ヴィーニェスに献呈(鏡の初演者)

第3曲 Une barque sur l'ocean (海原の小舟)~画家ポール・ソルドに献呈

第4曲 Alborada del gracioso(道化師の朝の歌)~批評家M.D.カルヴォコレッシに献呈

第5曲 La vallee des cloches (鐘の谷)~作曲家モーリス・ドラージュに献呈(ラヴェルの弟子)

献呈された5人の芸術家達は、1900年頃パリでラヴェルと詩人のファルグを中心に結成された、芸術家サークルのアパッシュ(Les Apaches)のメンバーです。

1928年、ラヴェルの弟子のロラン=マニュエルのインタビューによりまとめられ出版されたラヴェルの自伝「自伝的素描」によると、この「鏡」について「私の和声書法の発達にかなりの変化を示しているので、これまでの私の作風になじんできた音楽家達を当惑させるだろう。」と話しています。

この「鏡」という意味は、ラヴェル自身は言及しておりませんが、鏡が物を写すようにラヴェルの心をリアルに音で写し出そうとしたのではないかと言われております。 描写的な作品ですが響きが大変美しく私の好きな作品の一つです。

第3曲と第4曲は後にラヴェル自身が、管弦楽の曲に編曲しております。

第3曲 「海原の小舟」~モントリオール管弦楽団、シャルル・デュトワ指揮

ラヴェルはこの管弦楽曲を気に入っていたらしいのですが、初演は評判が良くなく生前はラヴェルは出版せず、出版されたのは1950年になってからです。

第4曲「道化師の朝の歌」~パリ管弦楽団、カラヤン指揮

まだ「鏡」をお聴きになられた事のない方のために、阿部裕之先生が師事されていたV.ペルルミュテ―ル氏(ラヴェルの直弟子です。)の演奏にリンク致します。

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ラヴェル「鏡」~V. ぺルルミュテール(ピアノ)♬

ラヴェル 鏡より 道化師の朝の歌♫~ブルーノ・リグット

ラヴェル 鏡♫~パスカル・ロジェ

ラヴェル 鏡♫~リヒテル

ラヴェル 鏡より 海原の小舟♫~ギーゼキング

ラヴェル 鏡より 道化師の朝の歌♫~リパッティ

ラヴェル 鏡より 道化師の朝の歌♫~リヒテル

ラヴェル 鏡より 道化師の朝の歌♫~ラローチャ

イヴォンヌ・ルフェブールによるラヴェル 道化師の朝の歌のレッスン

ラヴェル 鏡♫~野島稔

ラヴェル 鏡♫~ギーゼキング

「蛾」

第1曲の「蛾」は、献呈されている詩人レオン=ポール・ファルグの詩の一節からインスピレーションを受け作曲された曲ですが、闇の中で夜の光に群れる蛾の群れの羽ばたきの音とそのその雰囲気を描写したものです。 不安定なリズムの中にメロディが見え隠れする書法はピアニスティックで印象派のエテュードという感じです。

「悲しい鳥」

第2曲の「悲しい鳥たち」は、ラヴェル自身が「夏の一番暑い時間に、暗い森の中で途方にくれている鳥たちの姿」と言っており、フォンテーヌブローの森での小鳥たちの泣き声を聞いて触発され作曲したのではないかとも言われています。

「海原の小舟」

第3曲の「海原の小舟」は、アルぺッジョが壮大な大洋の波のうねりを描写し、メロディが揺られる小舟を描写しています。 ちなみにbarqueというのは帆船という意味です。 小舟と言ってもボートではありません。 壮大な曲です。  レッスンの中で阿部先生は、ラヴェル自身がオーケストラ用に編曲しているので、ピアノでオーケストラのように、壮大な波を表現しなければならないとおっしゃっていました。

「道化師の朝の歌」

第4曲の「道化師の朝の歌」は、ラヴェルの母の祖国のスペインのリズムを用いており大変エキゾティックな曲です。 「鏡」の中では一番有名で単独でも良く弾かれます。 タイトルのAlborada del graciosoはスペイン語で、Alboradaは「朝のセレナード」の意味です。 Graciosoは「道化師」の意味ですが、粋な道化師のユーモアとぺーソスが皮肉とナイーブさで描写されています。 

「鐘の谷」

第5曲もラヴェル自身が「正午に一斉に鳴り響くパリの教会の鐘にインスパイアされた。」と話していますが、谷間にこだまする鐘の音が瞑想的に描写されています。 阿部裕之先生はレッスンの中で、「スイスのアルプスを描写した曲で、悠久の時と満天の星を描写したラヴェルの曲の中で最も幸福な曲だといわれています.。」とお話しされていました。

15歳から帰阪するまでお世話になっていた♪関孝弘先生♪に頂いた「作曲家の生家」という写真集からラヴェルの生家の写真をご紹介します。

「作曲家の生家」写真集

The house of Ole Bull in Lysen

ラヴェルのピアノ

ラヴェルの使っていたピアノと左上に飾られている叔父の描いた母の肖像画

ラヴェルのJapanese parlor

ラヴェルのJapanese parlor

ラヴェルの寝室

ラヴェルの寝室