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リスト 「超絶技巧練習曲集」 S.139

MESSAGE

モーツァルトのクラビコードとピアノフォルテ

今日はリストの「超絶技巧練習曲集」について書きます。 この作品は東京音楽大学のピアノ実技の授業でお勉強した曲です。 もちろん全曲をしたわけではありませんので、「鬼火」を中心に書いていきます。 

東京音楽大学は一般大学と違い実技中心の音楽大学ですので、音楽に関する授業がほとんどです。 一般教養の科目も全て音楽に関連付けた中で講義が行われます。 語学は厳しいかもしれません。 ピアノ実技という授業もありますが、私はピアニストの♪関孝弘先生♪のプライベート・レッスンを受けておりましたので、大学では♪宮原節子先生とおっしゃる女性作曲家の方♪に作曲の面からの側面補強としてのピアノ・レッスンをして頂いておりました。

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原節子先生は東京芸術大学音楽学部附属音楽高等学校東京芸術大学で作曲を専攻された方で、卒業後はアメリカのノートルダム大学大学院でピアノを専攻された方です。 作曲は三善晃さんのお弟子さんでフランス音楽を得意としておられます。 ピアノはお小さい頃から♪ピアニストの野呂愛子さん♪に習っていらっしゃったので、ご自分の作曲された曲はご自分で初演されます。 またアメリカではラヴェルが「夜のガスパール」を献呈したルドルフ・ガンツのお弟子さんに師事していらしたそうです。 作曲家の視点からの演奏解釈は側面補強として随分お勉強になり、ピアニスティックな面からの関先生のレッスンと自転車の両輪という感じで、私には有意義な大学生活だったように思います。

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その宮原先生が私に初めて下さった曲がリストの「超絶技巧練習曲集」の第5曲の「鬼火」でした。 ♫最後に全曲にリンク致しますが、まずは鬼火」にリンクしたいと思います。 ピアノはエフゲ二ー・キーシンです。  半音階的に進む不気味なパッセージが鬼火を連想させる事からそのような副題がつけられたと思われます。♫

リスト愛用のピアノ

リスト愛用のピアノ

さてリストは1823年12歳の時ウイーンでベートーヴェンにそのピアノを誉められた事を生涯自負としておりましたが、1826年、15歳の時「超絶技巧練習曲」の初稿を作曲しております。  「若きリストによる全ての長短調の音階で書かれた48の練習曲」というタイトルが付けられてはいましたが、実際には12曲しか書かれませんでした。(S.136)

次の2稿目は1837年、26歳の時に「24の大練習曲Op.6」として出版されました。 しかし実際には12曲しか作られませんでした。(S.137) 1840年にはその第4曲を改作し、1847年には最後の部分を少し変更してポーランドのマゼッパ伯爵の物語にあやかって「マゼッパ」というタイトルを付けて出版しております。 これは恩師のカール・ツェル二ーに献呈されています。

1851年リストは3稿目の改作をし、翌1852年、現在知られている形でブライトコプフ・ウント・ヘルテル社から出版します。 これもツェル二ーに献呈されています。(S.139)

ワイマールの家

ワイマールの家

ワイマールの居間

リストの肖像画

1831年、20歳の時リストはパリでパガ二ー二を聴きピアノのパガニーにとして生きる決心をし、1848年ワイマールに定住して作曲に専念するまでは、大ヴィルトゥオーゾピアニストとしてヨーロッパ中を席巻します。 その間に何度も改訂され1851年に完成を見たこの作品はリストの縮図ではないかと思います。

リストの胸像

2曲を除いては標題を持つ描写風の音楽ですが、第1曲「前奏曲」はピアニストにとって華麗な幕開けです。 第2曲イ短調はパガニー二の演奏にインスパイアされたような輝かしい曲です。 第3曲「風景」は一転して静かなパストラルの気分の曲です。 第4曲「マゼッパ」は、イギリスの詩人バイロンによって紹介されたポーランドの悲劇の英雄「マゼッパ」の物語を描写したものですが、勇壮で荒々しい曲です。 第5曲「鬼火」はデリケートな曲です。 第6曲「幻影」はぺザンテと記された和音をアルぺッジョが華麗に飾って行きダイナミックな曲です。 第7曲「英雄」は、ヒロイックな心の琴線に触れる堂々とした威厳のある曲です。 第8曲「狩り」はドイツ・ロマン派音楽の特徴の夜の狩りを思い出させてくれます。 第9曲「回想」は甘美で優雅な曲です。 イタリア・オペラの叙情的なメロディに影響を受けたと思われます。 第10曲「ヘ短調」は野性的なほどに激しい曲です。 第11曲「夕べの調べ」は静かな夕べの情景を描写した曲です。 第12曲「雪あらし」(Chasseneige)は激しい風の中雪が吹き荒れる陰鬱な気分を描写しています。 曲の最後を飾る技巧的な曲です。

♫では超絶技巧練習曲集」全曲の演奏にリンク致します。 ピアノはジョルジュ・シフラです。♫

シフラ

1、Prelude 2、Molto vivace 3、Paysage 4、Mazeppa 5、Feux follets 6、Vision 7、Eroica 8、Wilde Jagd 9、Ricordanza 10、Allegro agitato molto 11、Harmonies du soir 12、Chasse Neige 

♩演奏者紹介♩

シフラ(1921~1994)はハンガリー生まれのピアニストでリスト弾きと言われる超人的な技巧の持ち主のピアニストです。 1930年フランツ・リスト音楽院に入りドホナー二に師事しますが、1956年のハンガリー動乱の際、西側に亡命しパリに永住して世界各地を演奏旅行して回ったピアニストです。