ショパン 「エチュ―ド Op.10, Op.25, 3つの新しい練習曲」 No.1
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生徒さんの中で新しくショパンのエチュードを始められる方がいらっしゃいますので、今日はショパンのエチュードについて書いて見ようと思います。 ショパンの練習曲(エチュード)は全部で27曲ありますが、作品10と作品25と3つの新しい練習曲に分かれております。 作品10と作品25はそれぞれ12曲からできております。
ショパンの練習曲はツエルニーやクレメンティなどのように後進の指導を目的として書かれた、単にピアノの高度な演奏技巧を習得するための練習曲とは全く違います。
技巧の面ももちろん、たとえば鍵盤上の広い音域にわたって分散したアルぺジオ、3度、6度、8度の進行、半音階的移行の演奏法、リズムの対照、レガートやスタッカートの弾き分けなどの現代でも至難の難しさを持つ練習曲ではあります。 ショパンの練習曲が弾ければショパンの全てのピアノ曲は弾けると言われているくらい、そこにはショパンのあらゆる作品を征服する鍵が隠れております。
しかしその中に詩的情緒やロマン的な香りの究極の美の世界が表現されており、「その練習曲の中からいかに芸術性を引き出すか」と言う高い音楽性を演奏者に要求する第一級の芸術作品であると言えます。
1829年ショパンが友人に宛てた手紙の中で、この練習曲は自分独特の方法で書いたという自負を述べており、「卓越した技巧の練磨を目的とする練習曲の分野に溢れるばかりの詩情で彩りを添えたのだ」と自負する天才の自信を垣間みる事ができます。
ですからショパンのエチュードを演奏する場合には技巧はもちろんの事ですが、それだけではなく高度に洗練された感覚や音楽性が要求され、たとえ技巧が完璧に弾けてもこの練習曲の持っている音楽の独自の世界を表現するのは大変難しく、弾きこめば弾きこむ程味わいが深まるピアニストには必携の練習曲です。
私もショパンのエチュードは高校生の時に全曲お勉強は終わっておりますが、今でも毎日のように練習の前にはそれを取り出して何曲かずつ必ずさらいます。
Op.10はショパンがまだポーランドにいた19歳の1829年からパリ初期の1832年にかけて作曲されており出版は翌1833年です。 フランツ・リストに献呈されております。 Op.25は1832年から1836年にかけて作曲され1837年に出版されておりダグー伯爵夫人に献呈されております。 3つの新しい練習曲は1839年に作られ翌年出版された「モシェレスとフェティス編集の練習曲集」の中に組み入れられております。 この3つの練習曲はOp.10やOp.25ほど大きくなく難しさも作品10や作品25に比べるとそれほどではありませんが叙情的な面が表れております。
親しまれている有名な愛称を書いてみます。
作品10-3(別れの曲)、作品10-5(黒鍵)、作品10-12(革命)、作品25-1(エオリアン・ハープ)、作品25-9(パピヨン)、作品25-11(木枯らし)~これらの愛称は全てショパンが付けたものではありません。
詳しいアドヴァイスはピアノを通してのレッスンでないと伝えきれないところがございますが、まずOp.10の方の楽譜の冒頭を掲載致します。(↓写真は全てクリックされると拡大致します。)
Op.10-1
Op10-2
Op.10-3
Op.10-4
Op.10-5
Op.10-6
Op.10-7
Op.10-8
Op.10-9
Op.10-10
Op.10-11
Op.10-12
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♫黒鍵のエチュードOp.10-5♫~辻井伸行さん
♫革命のエチュードOp.10-12♫~辻井伸行さん
(東京音楽大学付属高等学校出身の全盲のピアニストの方です。)
♫ショパン エチュード Op.10-1,10-2,10-3,10-4,10-12 Op.25-5,25-6,25-11♫~キーシン
♫ショパン エチュード Op.10より10曲♫~トリフォノフ
Op.25と3つの新しい練習曲の楽譜は続けて下↓のブログに掲載いたします。