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フランク「ピアノとヴァイオリンのためのソナタ イ長調」、ラヴェル「ヴァイオリンとピアノのためのソナタ」

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モーツァルトのクラビコードとピアノフォルテ

<フランク「ピアノとヴァイオリンのためのソナタ イ長調」>

この曲は私が師事するピアニストの♪阿部裕之先生♪がヴァイオリニストの豊嶋泰嗣さんと2015年6月9日に大阪倶楽部で演奏された曲ですが、おふた方のビッグな演奏家の見事に息の合った圧巻の素晴らしい演奏でした。

さてセザール・フランク(1822~1890)はベルギー出身の作曲家・オルガニストですが、近代フランス音楽の語法を確立した大作曲家です。  しかしその才能にもかかわらず36歳から亡くなるまでパリのサント・クロティルド教会のオルガン奏者を務め慕って集まる人々に作曲を教え続け、その生涯は他の有名な音楽家たちに比べると地味で慎ましやかなものでした。

晩年になるとその作風は内面から輝きを増し、傑作はいずれも60歳を過ぎて書かれております。この「ピアノとヴァイオリンのためのソナタ イ長調」も1886年に作曲されております。 

この曲は同郷の後輩のヴァイオリニスト・ウジェーヌ・イザイ(1851~1931)に献呈されておりイザイとその妻のボル・デ・ペーヌ夫人(ピアノ)によって作曲と同じ年の1886年に初演されております。 青年ヴァイオリニスト・イザイへの結婚のお祝いとして書かれたもので、フランクらしい「ささやかな手書き譜一束、わたしはここに心のすべてを込めました。」という献辞が添えられております。

4つの楽章を持つこのソナタは、ピアノはヴァイオリンの伴奏ではなく、またヴァイオリンも単なる独奏楽器として扱われておらず、ピアノとヴァイオリンの二重奏の大曲で、全曲を第1楽章の冒頭のヴァイオリンのメロディ<ニ~嬰へ~ニ>という3つの音符が基本的な役割を果たす循環形式をとっております。

心を打たれるこの名作は様々な演奏家からの要請で種々の編曲版が書かれております。 コルトーはピアノ独奏用に編曲しており、また「フルート・ソナタ」や「チェロ・ソナタ」もあり良く演奏されます。 またピアノ・パートがオーケストラに編曲されたコンチェルト版もありフランクの世界が更に壮大に展開されております。

名盤として知られているレコーディングにティボー(ヴァイオリン)、コルトー(ピアノ)があります。

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では私の好きなヴァイオリニストですがベルギーのヴァイオリニスト・グリュミュオーの演奏にリンクしたいと思います。 まだ聴かれた事のない方は是非この名曲を味わって頂きたいと思います。

フランク「ピアノとヴァイオリンのためのソナタ イ長調」♫~Arthur Grumiaux(ヴァイオリン),Istvan Hajdu(ピアノ)(No.1)

フランク「ピアノとヴァイオリンのためのソナタ イ長調」♫~同上(No.2)

ラヴェル「ヴァイオリンとピアノのためのソナタ」>

この曲も同じく2015年6月9日阿部裕之先生と豊嶋泰嗣さんが演奏された曲ですが、第3楽章ではヴァイオリンの名人芸も聴く事ができ非常に楽しい曲です。

さてこの曲はラヴェルが1923年から1927年という年月をかけて作曲しておりラヴェル最後の室内楽曲でもあります。 ラヴェルは彼自身の言葉によると、「ヴァイオリンとピアノは本質的に相容れない楽器と考えており、無駄な音符を削るのにこれだけの年数がかかった」と断言しております。 ロマン派的な厚い和声の響きではなく、線的な透明な書法が基になっており、その線のデザインや音の色彩感が効いている曲です。

ラヴェルはこの曲を女流ヴァイオリニストのエレーヌ・ジュルダン・モランジュのために献呈しましたが、彼女は病気のため初演が叶わず、ラヴェルのピアノとエネスコのヴァイオリンで1927年パリで初演されました。

全3楽章から成り立っておりますが、1楽章はアレグレット、2楽章は「ブルース」、3楽章は「無窮動」となっており2楽章はラヴェルがしばしば訪れていたアメリカのニューヨークのナイトクラブのジャズの雰囲気が加味されており、3楽章はヴァイオリニストの超絶技巧が要求されるものとなっております。

では同じくグリュミュオーのヴァイオリン演奏にリンク致しますのでどうぞお楽しみ下さい。

ラヴェル「ヴァイオリンとピアノのためのソナタ」♫~Arthur Grumiaux(ヴァイオリン)、Istvan Hajdu(ピアノ)(No.1)

ラヴェル「ヴァイオリンとピアノのためのソナタ」♫~同上(No.2)