ピアニスト谷真子Official Blog「message」

ピアニスト谷真子公式サイトよりブログ「message」

先日のメンデルスゾーンピアノ三重奏曲第1番の演奏会のリハーサルから

少し前の話になりますが、メンデルスゾーンピアノ三重奏曲第1番のコンサートのリハーサルをSalon Classicで本番2日前に行った時のことについて書いてみたいと思います。

事前に2回ほどリハーサルができればベストなのですが、今回はニコラさんのスケジュールの都合もあり事前に1回と本番直前に1回でした。

4/7の水曜日の午前中からお昼にかけて2時間程事前リハーサルを行いました。 海外の先生方はタフだというお話をよく聞きますが、まさにその通りだと思います。 

私はピアノ演奏やピアノ指導の仕事をしながら2011年より阿部裕之先生のもとで2年間大学院受験のための受験勉強をし(私の場合は専門はピアノですから受験勉強といってもデスク―ワークではなく、語学+あくまでもピアノのレッスンをとおして楽曲内容を掘り下げるという受験勉強になります)、2013年秋に社会人入試で国立大学の大学院に合格致しました。 現在ピアノの演奏活動の傍ら大学院に通って勉強を続けておりますので、論文の勉強のために英語などの文献を読むことはありますが、日常では私は英語を使いませんから、普段使わない言語と(リハーサルは英語で行います。 通訳はつきません)、細かいリハーサル、そして本番と続きますので体力勝負になります。

リハーサルの内容はチェリストブリュッセル音楽院の室内楽科准教授でいらっしゃるニコラ氏よりポイントとなるテンポなどの確認の他、音楽的なアドヴァイスを頂くというものです。 短い時間の間に的を得たアドバイスを頂けます。

ニコラ・デルタイユ氏公式サイト

各楽章について書いてみたいと思います。

メンデルスゾーンは裕福な貴族の家に生まれ、恵まれた環境に育った人物のようです。 育ちの良さから誰にも親しみやすいシンプルで美しい曲が多いと思います。

ピアノ三重奏曲第1番はヴァイオリンとチェロは比較的弾くのが優しいのですが、ピアノパートは曲の最初から最後まで常に速い細かいパッセージが続く曲です。 メンデルスゾーンはピアノ・ソロ曲もそうですが、細かいパッセージが多い曲が多いように思います。 今回はコンサートに当たって隅から隅まで細かいパッセージをさらわなければならず、時間もかかり、ピアニストにとっては結構大変な曲でありました。

第1楽章では、ヴァイオリン奏者より事前にご質問のあった、ボーイングについてのお話です。  ピアノ・トリオはバイオリン・チェロ・ピアノの3つの楽器による編成になりますが、違うメロディーを弾くところは各自ボーイングが違って良いとのことでした。 同じメロディーを弾くところは1つのボーイングでとのご指摘でした。

ピアノ・パートのテンポが走ってしまう箇所は、ピアノ・ソロとは違うアンサンブルの視点から練習方法をアドヴァイスを頂きました。これは実際にピアノを使ってでないとご説明が難しい点が多くあります。 後はリハーサル時からヴァイオリンとピアノのパートがどうしても合わない箇所があり、弦楽器奏者の視点からアドヴァイスを頂きました。

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第1楽章から

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ppの箇所はリラックスした雰囲気がほしいなど全体の中の音楽的な緩急についてアドヴァイスを頂きました。

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第2楽章はとても美しい楽章です。私は割とゆったりめのテンポをイメージしていたのですが、シューベルトなら心地よいゆったりしたテンポで良いが、メンデルスゾーンはシンプルな中に穏やかな美しさがあるとのご指摘がありました。 メンデルスゾーンも早めのメトロノーム表示を書いています。

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第3楽章は喜びに満ちた(joyful)楽章だという表現をしておられました。 速めのテンポが良いとのことでした。

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第4楽章は一貫したテンポが大切だという事でした。

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写真の箇所では弦楽器とピアノの音色を合わせると効果があるとアドヴァイスを頂きました。

4楽章の最後にはシューベルトに近いメロディーが出てくるなどのご指摘がありました。

ピアノという楽器は普段一人で練習することが多く、他の楽器と合わせる機会は少ないと思います。 同じ楽器といっても、ヴァイオリンとチェロなどの弦楽器とピアノでは構造が全く違い、音の鳴らし方も全く異なる楽器です。

東京音大のソルフェ―ジュの初見による室内楽の授業で、先生から渡された現代音楽のリズムの複雑な楽譜を数分間見てから、初見でチェロやクラリネット、ヴァイオリンの学生と3,4人で合わせるという経験はありましたが、コンサートでのトリオは今回が初めての経験でした。

室内楽ではお互いのボリュームのバランスや音色感をそろえなければ室内楽にはなりません。 また緊密なアンサブルを行うためにはソロ以上に一貫したテンポを心掛けなければいけません。

海外の音楽院には室内楽科やオペラやリートの伴奏科というそれを専門に学べる科がございますが、国内の音大には専門で学べる室内楽科はなく(東京音大の大学院には伴奏科というのがございます)、ニコラ氏は室内楽科の准教授でいらっしゃるので、国内にいながらにして国内では学べない室内楽のお勉強をさせて頂いております。

ピアニスト谷真子公式サイト