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6月24日の演奏会のプログラム紹介

6月24日のなら100年会館中ホールで演奏するラヴェルの曲3曲について簡単に紹介致します。

まずラヴェルの水の戯れ。

「水の戯れ」はラヴェル(1875~1937)がパリ音楽院在学中の1901年に作曲したピアノ曲で、当時の作曲の師のフォーレに献呈されました。

1902年4月5日サル・プレイエルで行われた国民音楽協会主催のリカルド・ビニェスのピアノ・リサイタルで、「亡き王女のためのパヴァーヌ」とともに初演されました。

ラヴェル自身はこの曲について「テンポ・リズムも一定なのが望ましい。 水の音、噴水、滝の音楽からインスパイアされたこの曲は2つのモティーフによって構成されている。 ソナタ形式の第1楽章にならっているが、古典的な形式をそのまま踏襲しているわけではない。」と言っております。

初演当時としては極めて斬新な響きのする作品だったと思えサン=サーンスの酷評を招きましたが、今日ではリスト・シャブリエからの影響から抜け出てピアニスティックで精巧なラヴェル独自の書法が本格的に開花した作品として高い評価を得ています。

またドビュッシーに先んじてフランス印象主義の幕開けを告げた作品でもあります。

タイトルはリストの「エステ荘の噴水」(Les Jeux d'Eaux a la Villa d'Este)から影響を受けておりますが、楽譜の冒頭にはアンリ・ド・レニエの詩「水の祭典」の一節「水にくすぐられて笑う河の神」を題辞として掲げております。

レニエの詩句はこの曲の実在を良く表現しており、「古い整然としたフランス式庭園の中央に噴水が設けてあります。 噴水の中にある古代の河の神の像は空高く噴き上げる水のしぶきを浴びて幸せそうです。 噴き上げられた水は七色の虹となって空中に霧散します。」という詩的楽想を象徴しております。

ラヴェルはJeau d'eauという言葉で噴水そのものを描写するのではなく、光の加減とともに変化する水の色彩と音響を表現していたようです。

ところでドビュッシーの「水の反映」(1905)と良く比較されますが、ラヴェルの「水の戯れ」(1901)は制御された噴水の美しい水の動きを古典的なソナタ形式で描いておりますが、ドビュッシーの「水の反映」は水に映った風物の輝き・揺らめきをより自由な形式で描いております。

次はラヴェルボロディン風に。

ラヴェルの「ボロディン風に」という曲は、ロシアの5人組と呼ばれるボロディンの作風を、ラヴェルが、パロディー(模倣)して作曲された曲です。

ボロディンとは、ロシア5人組と呼ばれる作曲家の一人で、19世紀後半のロシアで民族主義的な芸術音楽の創造を志向した作曲家たちです。

ミリイ・バラキレフ(1837年 - 1910年)、ツェーザリ・キュイ(1835年 - 1918年)、モデスト・ムソルグスキー1839年 - 1881年)、アレクサンドル・ボロディン1833年 - 1887年)、ニコライ・リムスキー=コルサコフ(1844年 - 1908年)の5人の作曲家たちをロシア5人組と呼びます。

同じロシアの作曲家チャイコフスキーは、西ヨーロッパ風を意識した作風を目指しましたが、ロシア5人組の作曲家はロシアの民族色の濃い作風を好みました。

ボロディンの曲の中で、オーケストラ曲のオペラ<イーゴリ公>よりダッタン人の踊り交響詩中央アジアの草原にては、一般によく知られていると思います。

ボロディンの曲は、ロシアの雄大さを感じさせ、抒情的でとても美しい曲です。

ラヴェルボロディン風にと言う曲は、サロン風の短い小品ですが、ヘミオラと呼ばれる3拍子と2拍子が組み合わされた複雑なリズムが使われるなど、ボロディンの作風より、より込み入った作曲技法が使われつつ、ボロディン風の息の長い旋律も残しています。

次はラヴェルシャブリエ風に。

この曲はグノーのオペラ「ファウスト」のアリアをラヴェルシャブリエ風に真似て書いた小品だという事です。

阿部裕之先生が、先日のコンサートのアンコール曲として弾かれましたが、会場の2階席で聴いていて、リスト/グノーのオペラファウストのワルツと言う曲となんとなく似ているなと思って聴いておりましたが、どちらの曲も原曲はグノーのファウストのオペラが基に編曲された曲のようです。

ちなみに、先日伴奏したヴィエニャフスキーのファウストの主題による幻想曲もグノーのオペラ「ファウスト」を基に編曲された曲です。

とても親しみやすい洗練されたメロディーで、素敵な曲です。

精一杯の演奏をお届けしたいと思いますので、大勢のご来場をお待ち申し上げております。