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ショパン 「幻想曲 ヘ短調 作品49」

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モーツァルトのクラビコードとピアノフォルテ

ショパン「幻想曲 作品49」は、1841年ショパンの創作の泉の湧き溢れる時期に作曲されたショパンの最高傑作の作品の一つです。 

ショパンがリストからジョルジュ・サンドを紹介されたのは、1836年の秋の事です。 リストの恋人のマリー・ダグー伯爵夫人と親しかったサンドはリストとダグー夫人が開いた夜会でショパンを紹介されます。 その後二人はパリを離れ旅に出ますが、1839年の6月からしばらくはサンドの別荘があるノア―ンで過ごします。 この時「バラード2番」などの名曲をたくさん創作しております。

サンドとダグー伯爵夫人

サンドとダグー伯爵夫人

ノアーンの景色

ノアーンの景色

ノアーンの館の中

ノアーンの館の中

その後1841年から1846年の間は夏の数か月間はサンドのノアーンの別荘で過ごし、「幻想曲 作品49」や「バラード4番」を初め多くの円熟した傑作作品を生み出しています。 サンドは自身もフランス・ロマン派の代表的な女流作家であり、婦人解放論の先駆者でもありましたが、ショパンが後期の傑作を生みだしたのはサンドの献身的な看護とショパンの才能を信じるサンドの愛情のおかげだと思います。

「幻想曲 作品49」は自由なソナタ形式という点では「バラード」と同じですが、バラードが3拍子系であるのに対して幻想曲は4拍子ですので「バラード」ではなくこの「幻想曲」という名前が付けられたのではないかと思われます。

リストの証言によると、「幻想曲」はサンドとショパンの喧嘩と仲直りを描写したものだとショパンが言っていたとの事らしいですが、構想は自由なソナタ形式で技巧もピアノの最高技術と言えるようなテクニックを駆使しなくては弾けない箇所が多くあり、奏者と聴衆の双方にとって名作と言えるのではないかと思います。

ツイメルマンのショパン「幻想曲 作品49」の演奏♫にリンク致します。 ツイメルマンはショパンコンクールの覇者ですが、ポーランドが生んだ素晴らしい超一流の芸術家です。 ( Part 1とPart 2に分かれています。) 

ちなみにファンタジーという作品は16世紀ルネッサンスから多くの作曲家によって書かれています。 しかし時代によってそのイメージは様変わりしているようです。 ロマン派の代名詞のように言われる「幻想曲」は作曲家が形式にとらわれず楽想の赴くままに作曲したというようなイメージだと思いますが、♬シューマンの「ファンタジー」♬、シューベルトの「さすらい人幻想曲」、♬リストの「ダンテを読んでーソナタ風幻想曲♬などが有名です。

ショパンの「幻想曲 作品49」は高校生の時、関孝弘先生のもとでお勉強した作品ですが、夏休み関先生がご家族でイタリアへ帰省される間は、関先生の先生でいらっしゃる♪米谷治郎先生(東京芸術大学名誉教授)♪にレッスンをして頂いておりました。 米谷先生はエーゲルディンゲル著の「弟子から見たショパン」の訳をされ音楽之友社から出版をなさっていらっしゃいます。

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ファンタジー楽譜

ファンタジー楽譜

序奏

67小節もの長い序奏(このメロディが”雪の降る街を”に使われています。)

agitato(主題提示部P.64)

agitatoの主題提示部

Lent, sostenuto(P.72)

Lent,sostenuto展開部

tempo primo(P.73)

tempo primo

piu mosso(P.77)

piu mosso

コーダから変格終止和音

コーダから変格終止和音

一見綺麗な弾いてみたいと思わせられる名曲ですが、その構想は雄大で非常に丁寧に堂々とまとまられた曲ですので、イメージ通りに表現するのはかなり難しい曲です。 ショパンの天才ぶりが良く発揮されている曲だと思いますが、その緻密な構成はショパンらしくないともいえるのではないかと思います。

いつも申しますが、ピアノはピアノを使ったレッスンでないとなかなかお伝えできない事が多くありますので、もしご興味のおありの方は(単発のレッスンもしておりますので)、♪どうぞ一度お問い合わせ下さいませ♪。