スクリャービン ピアノ・ソナタ第3番 作品23
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ロシアの作曲家アレクサンドル・スクリャービン(1872~1915)の作品は20世紀ロシア・ルネッサンスに属しておりますが、それまでの伝統的で保守的な芸術感とは袂を分かち、新しい神秘的な思想で超自然的な創造活動を繰り広げた作曲家です。
スクリャービンの初期の作品にはショパンの影響、ワーグナーとリストの影響が見られますが、その音楽言語は独創性に満ちておりライバルのラフマニノフと比べると非常に国際色豊かなものです。 またスクリャービンのイメージには常に脆さや非物質性といった素質がありそれはピアノの響きに反映されております。
スクリャービンは1897年8月周囲の反対を押し切って結婚をしパリへ行きます。 そしてそこでピアノ・ソナタ第3番を作曲します。 これは初期の作品ではありますが、モダニズムを目指したもので彼の過渡期の作品と言えます。 彼は後にこのソナタに「心理状態」という副題を付けその構想のイメージを形象化しておりますが、このソナタの暗く劇的な世界は周囲の反対を押し切って結婚した結婚生活の危機と精神的苦悩を反映していると言われております。
スクリャービンによるピアノ・ソナタ第3番の「魂の状態」の解説を掲載致します。
第1楽章ドラマティコ
自由で激しい魂は悲嘆と闘争の淵に情熱的に身を投げます。
第2楽章アレグレット
魂は束の間の仮の休息をとります。 苦しみ果てた魂は、是が非でも我を忘れ、歌い、花開く事を願望します。 けれども、軽やかなリズム、香ばしいハーモニーは単なる覆いに過ぎず、そこから透けて見えるのは不安に苛まれ傷つけられた魂です。
第3楽章アンダンテ
魂は流れに身を任せながら、優しく悲しい感情の海にたゆたいます。 愛、悲痛、おぼろな希望、言葉にならない物思い・・・。
第4楽章プレッソ
解き放たれた自然の嵐の中、歓喜にむせぶ魂は激しく震えます。 実存の奥底から湧き上ってくるのは、創造主である人間の猛々しい声、誇らしげに響き渡る勝利の歌。 だが、頂点に到達するにはあまりにも非力ゆえ、魂は時に慄きながら実存の奈落の底へと落下していきます。
スクリャービンのこの解説はスクリャービンの当時の心理状態を物語っておりますが、この作品以降スクリャービンの作風は形而上学的になってまいります。
ピアノ・ソナタ第3番は緩・急・緩・急の4楽章からなる本格的な多楽章ソナタで、全楽章を通じて劇的な演奏効果が貫かれておりピアニストには人気の高い作品です。
♫スクリャービン ピアノ・ソナタ第3番第1楽章♫~アシュケナージ
♫スクリャービン ピアノ・ソナタ第3番第2楽章♫~アシュケナージ
♫スクリャービン ピアノ・ソナタ第3番第3楽章♫~アシュケナージ
♫スクリャービン ピアノ・ソナタ第3番第4楽章♫~アシュケナージ
第1楽章
第2楽章
第3楽章
第4楽章