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リスト ピアノ・ソナタ ロ短調 S.178

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リスト(1811~1886)のピアノ・ソナタロ短調S.178はリストが作った唯一のピアノ・ソナタです。 1852年から1853年にかけて作曲され1854年出版されました。 リストに献呈されたシューマン幻想曲ハ長調への返礼としてシューマンに献呈され初演は1857年ベルリンでハンス・フォン・ビューローによって行われましたが、シューマンがこの曲を聴くことはありませんでした。

発表された当時はあまりにも斬新的でこの曲の賛否は真っ二つに分かれ、シューマンの妻のクララも酷評したようですが、現在では演奏人口は増えております。

このロ短調ソナタは伝統的なソナタの様式を全く新しいあり方に変容していて、そこにロマン的な表現方法の可能性を追求したリストの革新的な作品です。 作曲した時期はワイマール時代(1846~1861)でリストは独自の語法に基ずく大規模な作風を模索しておりました。 そうした新しい形式原理の実験が示されており、全体はソナタ形式を自由に応用した単一楽章からなり、その中に伝統的なソナタ形式の特質が織り込まれております。

古典派のソナタのように提示部、展開部、再現部と形式を分析するよりも、いくつかの重要な楽想が変形されそれによって全曲が統一されているリストの音楽技法を認識する事が大事で、ロマン派におけるピアノ・ソナタの一つの究極的な傑作と呼べると思います。

ベートーヴェンによってその可能性を尽くされてしまったピアノ・ソナタは、ロマン派の時代になって新しい意味を求めて多くの作曲家によって新しい方向性が探られましたが、リストのこのピアノ・ソナタは数あるピアノ・ソナタの中でもきわめてユニークなものであると言えると思います。 単一楽章の中に、ソナタ形式と多楽章形式の要素を同時に取り込んでおり、綿密な計算のもとに仕上げられているため構成はかなり複雑で、演奏者にとっても聴衆にとっても正しく理解することはやさしい事ではありません。

支離滅裂に見える種々の楽想は、もとはわずかの数の主題を変形させたもので、統一感が図られており、展開部には緩徐楽章に相当するものも含まれており、再現部では高揚感を持たせ、曲の最後は曲頭を回想し静かに終わっております。

ピアノのために書かれた交響詩といえるのではないかと思います。

リスト ピアノ・ソナタロ短調♫~キーシンNo.1

リスト ピアノ・ソナタロ短調♫~キーシンNo,2

リスト ピアノ・ソナタロ短調♫~キーシンNo.3

リスト ピアノ・ソナタロ短調♫~ツイメルマン

リスト ピアノ・ソナタロ短調♫~アルゲリッチ

リスト ピアノ・ソナタロ短調♫~ホロヴィッツ

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ピアノ・ソナタ ロ短調CD~アラウ

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ピアノ・ソナタ ロ短調CD~チェルカスキー

明日はブラームスのピアノ協奏曲第1番について書きます。