ラフマニノフ(1873~1943)のピアノ曲の中で「前奏曲Op.3-2」と「10の前奏曲作品23」と「13の前奏曲作品32」の24曲を合わせたものがラフマニノフの24の前奏曲と呼ばれております。
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ラフマニノフが「前奏曲 嬰ハ短調 Op.3-2 鐘」を作曲したのは1892年モスクワ音楽院を卒業して間もない頃ですが、他の小品とともに全5曲からなる作品3の「幻想的小品集」としてまとめられその第2曲に収められました。 それが今日ラフマニノフの24の前奏曲の第1番とされております。
「前奏曲 嬰ハ短調 作品3-2」はモスクワのクレムリンの鐘の音にラフマニノフがインスパイアされて作曲したもので大小の多数の鐘の音が交錯して響く雰囲気が感じられます。 通称の「鐘」のタイトルはこの作曲の由来から付けられたものです。 この作品は1892年10月8日のモスクワ電気博覧会の祝賀会においてラフマニノフによって初演され翌1893年他の小品とともに「幻想的小品集 作品3」として出版されました。 fffからpppに至る 初演当時から絶大な人気があった作品です。
♫ラフマニノフ 前奏曲 嬰ハ短調 作品3-2 「鐘」♫~アシュケナージ
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「10の前奏曲 作品23」は1903年に完成されましたが、まず1901年に「10の前奏曲」の中の第5曲のト短調を書きあげ1903年に残り9曲を完成させております。
ラフマニノフは24の長短調それぞれに対して1曲ずつのプレリュードを完成しておりますが、これはショパンの「24のプレリュード」に倣ったものです。 バッハの「平均律クラヴィーア曲集」が出現して以来、24の異なる調性でピアノ曲を作曲しようとする試みは多くの作曲家を刺激いたしますが、ロマン派から現代にいたるまでのこの種の代表的な作品はショパンとスクリャービンの「24の前奏曲」、ショスタコーヴィッチの「24の前奏曲とフーガ」、そしてラフマニノフの「24の前奏曲」です。
ラフマニノフの「24の前奏曲」は明確な3部形式によるものが多く、ポリフォニック的であると言えると思います。 しかしラフマニノフは初めから24曲をひとまとまりの曲集として書こうという構想があったわでではなかったようです。 長調と短調が交互になるように工夫はされているもののショパンのように五度圏の順序に従って整然と配置されるような明確な規則性は認められません。
ラフマニノフは初めから「24の前奏曲」を書こうという意図をもって作曲したわけではなく、1902年から1903年、ショパンのプレリュード20番ハ短調「葬送」を主題として「ショパンの主題による変奏曲 作品22」を作曲した頃から、「24の前奏曲集」を書く意図が働いたようです。
Op.23-2 変ロ長調
3部形式の雄大な前奏曲です。 ロシア人の祝祭気分を描写した音楽と言われラフマニノフの前奏曲の中でも特に豪放で華やかな作品です。
Op.23-5 ト短調
通称「プレリュード・マーチ」と呼ばれ「鐘」と並んでよく演奏されるポピュラーな傑作です。 3部形式になっております。
♫前奏曲 ト短調♫~ランラン
Op.23-7 ハ短調
暗く重苦しいムードが支配的な曲ですがドラマティックでダイナミックな感情の高揚を表現しております。
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「13の前奏曲 作品32」はラフマニノフのアメリカ公演の後の1910年に完成しており、これで24の前奏曲が完成いたしました。 ロシア的なセンティメンタルでロマンティックな面に加え、「10の前奏曲」に比べるとモダンな色彩が濃くなっております。
Op.32-10 ロ短調
この曲はスイスの画家アーノルト・ベックリンの「帰還」という絵のイメージを音楽にしたものです。 3部形式のロマンティックな曲です。
Op.32-12 嬰ト短調
3部形式の前奏曲でロシアの冬のイメージを描いたような絵画的な音楽です。
リンパニー
明日はヴィヴァルディの調和の霊感について書きます。