ラヴェルの楽譜~版による記譜の違い
<谷真子ピアノレッスン・ルーム「musica」より>
現在私が取り組んでいるラヴェルの鏡について書きたいと思います。
なぜ演奏する時にあらゆる出版社の楽譜を見比べるのでしょうか。
楽譜には原典版と呼ばれるものと校訂版と呼ばれるものがありますが、基本はほぼ同じです。 しかし校訂版の方は編集者の音楽に対する考え(フレーズや強弱記号など)が付け加えられています。 それは”解釈の違い”と言われるものだと思いますが、CDを聴き比べることによっても演奏家による解釈の違いを聞き取ることはできますが、楽譜から解釈の違いを読み取ることができます。
解釈の違いだけなら良いのですが、時々ミスプリかと見受けられる楽譜もあります。 フランスもののデュラン版の楽譜で読譜していると、小節の拍数が合わないミスプリかと思われる箇所が何ケ所か出てまいります。
ラヴェルの鏡の中の第1曲「蛾」の中にもありました。
デュラン社
↓最後の休符が16分休符になっています。
ショット社
↓最後の休符が8分休符です。
細かいようですが、デュラン版の譜割りだと、この曲は3拍子ですから、前の10個並んだ32分音符はゆったり弾かなければいけない計算になります。 CDを聴いてなんとなく弾くこともできますが、楽譜から正確に音楽を読み取ろうとすると、一つの楽譜だけを思い込んで演奏していると、解釈どころか根本から間違った演奏解釈になることがあります。
この32分音符をゆったり弾いていたところ、ラヴェルに直接教えを受けたフランスのピアニストのぺルルミュテールに師事されていた♪阿部裕之先生♪にレッスンの中で、「ショット版では譜割りはこう」とご指摘頂き、ショット版の楽譜を購入したところ、全く楽譜が違うことが判明しました。
そのような理由から深く読み込んで演奏するには、何冊かの楽譜を見比べないといけないのだと思いました。