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シューマン 幻想小曲集 Op.12

シューマン(1810~1856)の「幻想小曲集作品12」は8つの小品からなるピアノ曲集ですが、それぞれに詩的なタイトルが付けられておりながら、互いに深い関連性があり、統一感を持ってまとめあげられた作品です。

どの曲もファンタジー豊かな小品ですが、各曲のコントラストと調和と均衡は見事で、シューマンらしい幻想的な美しい作品となっております。

1837年から1838年にかけて作曲され、1838年ライプツィヒのブライトコプフ・ウント・ヘルテル社から出版、シューマンと親交のあったイギリスの女流ピアニストのアンナ・ロビーナ・レードロウに献呈されております。

この曲集には知られている8曲の他にシューマンが1835年に「スイス音楽時報」に発表した無題の第9曲が存在し、草稿時には9曲でしたが出版された時には削除されて8曲となっております。 ピアニストによって第9曲の扱い方は異なります。

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アルゲリッチ

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アラウ

また「幻想小曲集」というタイトルはシューマンが傾倒したドイツロマン派の小説家ホフマンの「カロ風幻想作品集」に由来しております。

ちなみにシューマンが「幻想小曲集」と名付けた作品は他に作品73(クラリネットとピアノ)、作品88(ピアノ三重奏)、作品111(ピアノ独奏)があります。

第1曲「夕べに」Des Abends

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同じ旋律が繰り返されますが微妙な転調による色づけがまるで夕暮れの空の織りなす綾を見ているようです。

第2曲「飛翔」Aufschwung

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第1曲目とは対照的に急速なリズムの中で次々と音楽的なイメージが飛翔する作品です。

第3曲「なぜに」Warum?

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冒頭に提示される6音からの音型の繰り返しが「なぜ?」という気持ちを代弁するかのようです。

第4曲「気紛れ」Grillen

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スケルツォ的性格の作品です。 調やリズムの扱いに「気紛れ」なムードが出ております。

第5曲「夜に」In der Nacht

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クララに宛てた手紙の中で、ホフマンの「ヘロとレアンダー」という物語に出てくるエピソードを引用しています。 それは灯台の下で毎晩たいまつを掲げて待つ女のもとに男が海を泳いで渡って会いに行くという幻想的な恋人たちのエピソードです。

第6曲「寓話」Fabel

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緩やかな音楽とスケルツァンド風な音楽が対比しながら曲は進んで行きます。

第7曲「夢のもつれ」Traumes-Wirren

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A-B-A'という三部形式の作品です。 常に運動を続けるAとコラール風のBの対比が鮮やかです。 

第8曲「歌の終わり」Ende vom Lied

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クララに「曲集の終わりはすべてが楽しい結婚式へと思いましたが、君を想う胸の痛みのため、婚礼の鐘と葬式の鐘が入り混じって聴こえてきます。」と書き送っています。  快速なテンポで婚礼の喜びが歌われますが、最後のコーダ↓では一転して瞑想的な雰囲気になり鐘の音が響き渡ります。

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第9曲「無題」ANHANG

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シューマン 幻想小曲集 作品12♫~アルゲリッチ

シューマン 幻想小曲集 作品12♫~イエルク・デームス

シューマン 幻想小曲集 作品12より~谷真子(高1)

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アラウ

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アルゲリッチ

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ブレンデル

明日はメンデルスゾーンピアノ三重奏曲第1番について書きます。

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