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シューベルト ピアノ五重奏曲 イ長調 作品114 D.667 「ます」

シューベルト(1797~1828)はオーストリアの作曲家でドイツ歌曲に功績が大きく「歌曲の王」と呼ばれる事もある作曲家です。 ピアノ五重奏曲「ます」は1819年シューベルトがまだ22歳の時作曲された作品ですが、出版はシューベルトの死の翌年の1829年に行われております。

このピアノ五重奏曲を作曲した1819年頃までには、「魔王」、「野ばら」などのドイツ・リートが生まれておりとっくに100曲を超す歌曲を作曲しておりました。 ピアノ五重奏曲を作曲する2年前の1817年春に作曲した歌曲にD.550に当たる「ます」という歌があります。 ロマン派抒情詩人シューバートの詩に作曲したもので、清流に遊ぶ魚とこれを釣り上げようとする釣り人とのドラマティックな歌ですが、旋律の良さはもちろん、魚と人間とが見事に生き生きと描かれております。

この「ます」の旋律を第4楽章の主題にして作曲したものがピアノ五重奏曲「ます」です。 サブ・タイトルはここから来ております。 

シューベルト 「ます」 D.550♫~フィッシャー=デイスカウ(独唱)

シューベルト 「ます」 D.550♫~ヘルマン・プライ(独唱)

シューベルト 「ます」 D.550♫~シュワルツコプフ(独唱)

ピアノ五重奏曲では水の中に現れては消えるますのモチーフを変奏曲でうまく表しており、編成はピアノ、ヴァイオリン、ヴィオラコントラバスとなっております。

作曲を依頼したのは木管楽器とチェロの愛好家であった裕福な鉱山技師のパウムガルトナーで「冬の旅」を初演した名歌手のフォーグルと北オーストリアのシュタイアー地方を旅行で訪れた際の事でした。 パウムガルトナーはコントラバスを加えた編成にする事と歌曲「ます」の旋律に基ずく変奏曲を加える事を依頼いたしました。

作品は5つの楽章から構成されており、第4楽章は歌曲「ます」による変奏曲で、弦楽器のみにより主題が提示された後5つの変奏が続きます。

シューベルト ピアノ五重奏曲 「ます」 第4楽章♫~リヒテル(ピアノ)、ボロディン弦楽四重奏団

シューベルトの曲は根底に「歌の心」を持ち合わせておりますが、さわやかで清々しいムードがすみずみまでにじむこのピアノ五重奏曲「ます」は22歳という若さだから書けたのかとも思います。

第1楽章

古典的な様式でありながら淡い中間調の色合いが好ましい柔軟な豊かな歌心に溢れた曲です。

第2楽章

シンプルな楽章ですが、大変美しい音楽です。

第3楽章

しなやかなスケルツォ楽章で弦とピアノの対話が面白いです。

第4楽章

歌曲「ます」の旋律が表れます。

第5楽章

非常に生き生きとした活発な音楽が展開されます。

シューベルト ピアノ五重奏曲 「ます」 全曲♫~アラウ(ピアノ)、ジュリアード弦楽四重奏団

シューベルト ピアノ五重奏曲 「ます」 全曲♫~ギレリス(ピアノ)、アマデウス弦楽四重奏団

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パウル・バドゥーラ=スコダ(ピアノ)、バリリ四重奏団員、オットー・リューム(コントラバス

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ピーター・ゼルキン(ピアノ)

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