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シューベルト 幻想曲「さすらい人幻想曲」 ハ長調 D.760 作品15

さすらい人幻想曲」はフランツ・シューベルト(1797~1828)が作曲したピアノ独奏曲ですが、幻想曲といいながら4楽章制の自由な形式のソナタ風作品で切れ目なく演奏されます。 リストのピアノ・ソナタロ短調に影響を与えたと言われており、作曲されたのは1820年で出版は1822年です。

第2楽章の変奏曲主題がシューベルトの歌曲「さすらい人」D.493によるのでこの名があります。 

シューベルトの歌曲「さすらい人D.493」は詩はシュミット・フォン・リューベックによるものですが、この世のいずこにも幸福を見出せぬさすらい人の心が歌われたシューベルト若き日の楽曲です。 

「自分は自分自身の安息できる地を、ため息をつきながら探してきた」と歌われ、主人公が理想の国を追い求めて歌う途中の主題(詩の第2節の部分)がピアノ曲の「さすらい人幻想曲2楽章」に引用されております。

第2節

Wo bist du, mein geliebtes Land?

Gesucht, geahnt und nie gekannt!

Das Land, das Land, so hoffnunsgrün,

das Land, wo meine Rosen blühn,

Wo meine Freunde wandeln gehn,

wo meine Toten auferstehn,

das Land, das meine Sprache spricht,

O Land, wo bist du?

シューベルト 歌曲「さすらい人」D.493♫~フィッシャー=デイスカウ

また「さすらい人幻想曲」の第1楽章の主題の冒頭音型(ダクティルリズム)はメロディとしては優美とは言えませんが、歌曲「さすらい人」の伴奏音型を利用したものでこの冒頭音型のリズム(ダクテイルリズム)が全体を統一いたしております。

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ダクティル

詩の韻脚の一つ。 アクセントの強い音節の後に2つのアクセントの弱い音節が続く。(長ー短短)

ところでこの「さすらい人幻想曲」はシューベルトにとって特殊な作品で、穏やかな曲想の多いシューベルトのピアノ作品としては高度の演奏技術を必要としシューベルト自身が「こんな曲は悪魔にでも弾かせてしまえ」と言ったというほどの逸話が残っております。

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第1楽章

歌曲「さすらい人」のダクティルリズムを基にした主題によるソナタ形式です。

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第2楽章

歌曲「さすらい人」の悲愴な旋律による変奏曲です。

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第3楽章

第1楽章の主題のリズムをさらに強調した主題によるスケルツォ風楽章です。

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第4楽章

ピアニスティックで華やかな楽章です。 第1楽章の主題がフーガ風に回想されて始まります。 左手のアルペジオが難しいです。

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シューベルト さすらい人幻想曲♫~ブレンデル(ピアノ)

シューベルト さすらい人幻想曲♫~ケンプ(ピアノ)

シューベルト さすらい人幻想曲♫~ポリーニ(ピアノ)

シューベルト さすらい人幻想曲♫~キーシン(ピアノ)

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ポリーニ

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