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シューマン アベッグ変奏曲 作品1

MESSAGE

モーツァルトのクラビコードとピアノフォルテ

シューマン(1810~1856)のアベッグ変奏曲は1829年から1830年にかけてライプツィヒで書かれたシューマン20歳の時の意欲的なデビュー作です。 正式なタイトルは「アベッグの名による主題の、ピアノのための変奏曲」です。

シューマンは初めはピアニストを目指しておりましたが、練習しすぎからの手の故障によりピア二ストへの道を断念致します。 音楽家への夢は大きかったようですが家庭の事情によりライプツィヒ大学で法律をお勉強する事になります。 その中この「アベッグ変奏曲」を上梓する事によって新進気鋭の作曲家としてスタートできた彼の喜びと気概はひとしおのものがあったようで、それを母に伝える手紙も残されております。

献呈者は伯爵令嬢パウリーネ・フォン・アベッグとなっておりますが、これは架空の人物でシューマンのユーモア精神溢れた想像力の産物だろうと考えられます。 モデルとして推察できる人物はシューマンの周りに数名おりますが、彼の心に深く関わったという事実はございません。

ですからシューマンの周りの親しい存在の人をAbeggという名に置き換え空想を膨らませその綴りのA-B-E-G-Gを音に置き換え主題を作り創作したと考えるのが至当なのではないかと思います。

しかしこの創作態度が初期ロマン派的でもあり後のシューマンの作風の核とも言えるのではないかと思います。 そういう意味でこのデビュー作はシューマンの作品の中で非常に重要な作品と言えるのではないかと思います。

当時としてはオペラの旋律を主題としていないのも斬新な発想だったようですが、表題の綴りをドイツ音名に置き換え主要動機を作っていくという文学的なアイデアがこの作品をさらにファンタスティックにさせているのではないかと思います。

主題は前述の通りABEGGの5音からなる動機で始まり若々しくシンプルで清楚な主題です。 その後第1、第2、第3変奏と続きますが明確に変奏番号が打たれているのは第3変奏までで後は「カンタービレ」と「幻想曲風フィナーレ」と書かれているだけです。

ランランとキーシンの演奏にリンク致します。

シューマン アベッグ変奏曲 Op.1♫~ランラン

シューマン アベッグ変奏曲 Op.1♫~キーシン

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アシュケナージ

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キーシン デビューリサイタル

この曲は中学生の時♪故片岡みどり先生(当時相愛大学名誉教授)♪の元でお勉強した曲ですが、下の楽譜のご注意は片岡先生の楽譜から写させて頂いたものです。 片岡先生はいつもご自分の楽譜の注意をお勉強の前には写すようにおっしゃっていました。

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主題

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第1変奏

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第2変奏

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第3変奏

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カンタービレ

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幻想曲風フィナーレ

明日はベートーヴェンの「創作主題による32の変奏曲 ハ短調」について書きます。