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リスト オーベルマンの谷/Liszt Vallee d'obermann

リストの「オーベルマンの谷」はリストの「巡礼の年第1年スイス」の第6曲に入っている曲です。

「巡礼の年」という作品はリストが20代から60代までに断続的に作曲したものを集めたもので、リストがスイスとイタリアで見聞した風物から得た詩的な想念、純粋な心象風景をピアノに託して音楽化したもので、いわば一種の旅行印象記とも言えます。

第1年「スイス」は1835年から1836年にかけてリストがマリー・ダグー伯爵夫人と共に訪れたスイスの印象を音楽で表したものです。 リストはこの序文で、スイスの風景を絵画的に描写したのではなく、それらが魂の中に惹き起こした深い情緒を音楽にしたという内容を書き残しております。

第6曲の「オーベルマンの谷」はスイスの山の牧歌的風景に、20代のセナンクールがその内面的な心の動きを著した書物「オーベルマン」への共感を重ねたもので、リストの大いなる内省、個人的な告白を伝えるものです。 オーベルマンという谷がスイスに実在するわけではありません。

リストはセナンクールの「オーベルマン」の本を「人間の苦悩における無情な孤独を奏でる一弦琴」と呼ぶ一方で「私の苦痛を癒す本」としております。 セナンクールの「オーベルマン」は主人公のオーベルマンから友への書簡という形式を用いて書かれており、主人公の精神の遍歴を描いております。 リストは「オーべルマンの谷」の曲の中でも主人公の経験を見事に音楽で描写しております。

「オーベルマンの谷」の冒頭は孤独な絶望を音楽で描写しております。 長調に移行するにつれて」、唯一信じる真実は自分自身の感覚にのみ存在するというセナンクールの心情が表現されております。

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リスト オーベルマンの谷♫~キーシン

リスト オーベルマンの谷♫~アラウ

リスト オーベルマンの谷♫~ホロヴィッツ

リスト オーベルマンの谷♫~リヒテル

リスト オーベルマンの谷♫~ベルマン

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ブレンデル

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アラウ

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