チャイコフスキー 四季 Op.37b/Tchaikovsky Les Saisons(The Seasons) Op.37b
「四季」作品37bはピョートル・チャイコフスキー(1840~1893)が作曲したロシアの一年の風物を各月毎に12のピアノ曲で描写した作品集です。
チャイコフスキーは、富裕な未亡人フォン・メック夫人から1876年以来経済的な援助を受けていて、それからは作曲に専念できるようになりましたが、それまでは不向きな音楽院での教授の仕事や対人関係の問題で神経を疲労させ経済的にも恵まれた境遇ではありませんでした。
こうした時、ペテルブルクの音楽雑誌「ヌヴェリスト」の出版者ベルンハルトから1876年の1月号より毎月その時期の風物を描いたピアノの小品を作曲してもらって雑誌に掲載したいという依頼を受けます。 ベルンハルトはこの12曲で「四季」というピアノ曲集の計画をたてたのでした。 チャイコフスキーは喜んでこれを引き受け1年間でこの曲集は完成いたしました。
この一連の作品は大成功しロシアばかりでなく外国でも喜ばれました。 そしてのち1885年に親しい出版社のユルゲンソンからこの曲集は作品37bとして出版されました。 作品37としてピアノ・ソナタト長調があるので区別するためにbが付けられたわけです。
各曲ともロシアの詩人が各月の風物を題材にした詩を参考にしております。 季節の自然のみならず民衆の生活をも生き生きと描写したユニークな作品でその音楽には祖国ロシアの自然と人々を見つめるチャイコフスキーの暖かい眼差しが息づいています。 詩と音楽は外面的な結びつきで関係しているのではなく、また単に描写音楽というわけでもなく、詩に潜む内容的な印象や抒情が音楽化されているのであって、メンデルスゾーン、ショパン、シューマン、リストなどの影響を見る事ができます。 また各々の小品の標題は編集者がつけたものです。
「四季」はきわめて管弦楽的な発想で作曲されており20世紀のソ連の指揮者アレクサンドル・ガウクが管弦楽編曲いたしております。
Les Saisons
- I. Janvier au coin du feu ♫炉辺にて♫ アレクサンドル・プーシキンの詩
安らかで静かな気持ちのいい小部屋で夜を過ごす平和な気分が描写されております。
- II. Février carnaval ♫謝肉祭♫ ピョートル・ヴァゼムスキーの詩
祭りの賑わいとともに春が訪れ自然が目覚めると自然の情景とそれに伴った人々の動きが描写されております。
- III. Mars chant de l'alouette ♫ひばりの歌♫ アポーロン・マイコフの詩
- IV. Avril perce-neige ♫松雪草♫ マイコフの詩
- V. Mai les nuits de mai ♫白夜♫ アタナシイ・フェートの詩
白夜の美しさを歌ったフェ―トの詩を標題としております。
- VI. Juin barcarolle ♫舟歌♫ アレクセイ・プレシチェーエフの詩
ロシアの河や湖での舟遊びによるものです。
- VII. Juillet chant du moissonneur ♫刈りいれの歌♫ アレクセイ・コリツォフの詩
自然と結びついた民衆の生活が描写されております。
- VIII. Août la moisson ♫収穫の歌♫ コリツォフの詩
- IX. Septembre la chasse ♫狩りの歌♫ プーシキンの詩
- X. Octobre chant d'automne ♫秋の歌♫ アレクセイ・ニコラエヴィッチ・トルストイの詩
秋を迎え自然は枯れていきます。
- XI. Novembre course en troïka ♫トロイカで♫ ニコライ・ネクラーソフの詩
再び冬が訪れます。 チャイコフスキーのピアノ曲中で有名なものの一つです。 トロイカというのは3頭立ての馬橇の事で11月ともなるとロシアは雪におおわれもっぱらそりが利用されます。
- XII. Décembre Noël ♫クリスマス週間♫ ヴァシーリー・ジュコーフスキーの詩
人々は明るい気分で1年を終えます。