リスト 詩的で宗教的な調べ/Liszt Harmonies poetiques et religieuses S.173
「詩的で宗教的な調べS.173」はリスト(1811~1886)が1853年に完成させた10曲からなるピアノ曲集です。
アルフォンス・ド・ラマルティーヌの同名の詩集にインスパイアされて作曲したもので、献呈はカロリーヌ・ヴィットゲン伯爵夫人に献呈されております。 第3曲(孤独の中の神の祝福)と第7曲(葬送)が有名でしばしば単独で取り上げられます。
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ラマルティーヌ(1790~1869)
フランスの詩人。 ロマン派の代表的詩人でフランスにおける近代抒情詩の祖と言われヴェルレーヌや象徴派に大きな影響を与えた。
13歳でリストはパリを訪れ演奏家として華やかな生活を送り、多くの作曲家や詩人と交流を持ちますが、ラマルティーヌともベルギョジョーソ公夫人のサロンで出会い深い交友関係を持ちます。 ラマルティーヌの同名の詩集は1830年に出版され当時20歳前後だったリストはこれに深い感銘を受けます。
1834年若きリストはラマルティーヌの詩集にインスパイアされ現在の曲集第4曲「死者の追憶」の原型となる単一の楽曲の「詩的で宗教的な調べ」を作曲します。
晩年にはローマで聖職者の地位を得て宗教的な生活に入ったリストですが、この頃から若くから内在していた彼の宗教的な側面が表現され、1845年に曲集としての「詩的で宗教的な調べ」の初稿を書き、1847年・1853年と2度の校訂を得て現在の「詩的で宗教的な調べ」の形といたします。
曲集には序文としてラマルティーヌの詩が掲げられており更に第1・3・9曲にもそれぞれラマルティーヌの詩が付されております。
序文
第1曲に付された詩
第3曲に付された詩
第9曲に付された詩
第1曲 祈り
第2曲 アヴェ・マリア
第3曲 孤独の中の神の祝福
曲集の中で最もスケールが大きくリストの宗教的・内省的な側面を象徴する傑作です。 信仰によって心の平和を得たという内容のラマルティーヌの同名の詩が掲げられております。
第4曲 死者の追憶
第5曲 パーテル・ノステル
第6曲 眠りから覚めた御子への賛歌
第7曲 葬送
曲集の中では最もよく知られた作品で弔いの鐘を模したと言われる序奏や中間部の連続オクターヴが有名です。 「1849年10月」との副題が掲げられておりますが、これはハプスブルク朝の下にあるオーストリア帝国からハンガリー王国が独立しようとした1848年のハンガリー革命の失敗により1849年10月にリストの知人も多く処刑された出来事から付けられ、祖国のために命を散らした者たちへの哀歌ではないかと現在では見なされております。 またかつては1849年10月に死去したショパンへの追悼曲ではないかと見られた事もありました。
第8曲 パレストリーナによるミゼレーレ
第9曲 アンダンテ・ラクリモーソ
第10曲 愛の賛歌
♫孤独の中の神の祝福♫~アラウ
アラウ