ラフマニノフ(1873~1943)はロシアの作曲家・ピアニストですが、「6つの楽興の時 作品16」は1896年に作曲されたラフマニノフ初期の6曲から成るピアノ曲集です。
題名はシューベルトを連想させますが、超絶技巧やピアノ書法にはショパンやリストの影響が見受けられます。
各曲は組曲を構成しながらも個別の主題や気分を備えた独立した楽曲として成立しており、ピアニストとしても活躍したラフマニノフらしく演奏には極めて高度な技巧を必要とされます。
「6つの楽興の時」はラフマニノフのそれ以前のピアノ作品に比べると長めでテクスチュアは重厚で超絶技巧の要求もより高度であり作品の細部は装飾的というより機能的になっております。 ラフマニノフのそれまでのピアノ曲の作曲の知識を総括する作品であり、ラフマニノフが「自分の心の内にあるもの」を完全に描き出した作品です。
奇数番目の曲は比較的ゆっくりと、偶数番目の曲は極めて速く劇的な雰囲気を持ち、全体がロシアの荒涼とした大地を覆う美しい情景に彩られております。
第1曲 アンダンティーノ
息の長い内省的な旋律によって曲集は始まり急激なクライマックスへと畳み掛けます。
第2曲 アレグレット
ラフマニノフの演奏技巧の熟達を告げる小品です。
第3曲 アンダンテ・カンタービレ
葬送行進曲とか哀歌と呼ぶのに相応しく、ゆっくりとした叙情的な美しい旋律が綿々とした情緒を感じさせます。
第4曲 プレスト
ショパンの前奏曲などにインスパイアされており濃密な旋律が奏されております。
第5曲 アダージョ・ソステヌート
曲集に淡い光が差し込むような優しさに満ちた長調の作品です。
第6曲 マエストーソ
3声体の重厚なテクスチュアによる堂々とした終曲です。
♫ラフマニノフ 楽興の時♫~ベルマン
♫ラフマニノフ 楽興の時♫~ポゴレリッチ