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ラヴェル 高雅で感傷的なワルツ/Ravel Valses Nobles et Sentimentales

「高雅で感傷的なワルツ」はモーリス・ラヴェル(1875~1937)が1911年に作曲したワルツ集です。

ピアノ独奏曲として作曲され、翌1912年に管弦楽版が作られました。

ラヴェル自身が「自伝的スケッチ」でこのワルツ集を「シューベルトを手本にした一連のワルツ」と述べていることから、シューベルトの「34の感傷的なワルツ集(D.779)」と「12の高雅なワルツ集(D.969)」を意識して作曲されたと考えられております。

シューベルト 感傷的なワルツ♪~リリー・クラウス

シューベルト 高雅なワルツ♪~リリー・クラウス 

初演は1911年5月9日にパリのサル・ガヴォーで、保守的な国民音楽協会から独立した独立音楽協会(SMI)の演奏会において、ルイ・オべールのピアノ独奏によって行われました。

この演奏会はスカルラッティの「ソナタ」を除いて作曲者の名は伏せられ、演奏後に誰の書いた曲かを当てるというユニークな趣向で行われました。 これは新しい曲と言えば理由もなく攻撃するパリのアカデミー派や反動的な音楽評論家に一矢酬いるためばかりでなく、新しい傾向の作品を無批判に有難がるファンに対しても反省を求める意図があったと思われます。

当時の音楽評論家エミール・ヴュイエルモ(1878~1960)は、「ラヴェルは自分の曲がプログラムに含まれている事は誰にも教えなかったので、ラヴェルディレッタントラヴェルのご機嫌をとるつもりで曲を嘲った。」と言っております。

プログラムに添付されていたアンケート用紙の回収結果では半数の人がこの曲をラヴェルの曲であると答えましたが、一方でサティやコダーイの作品と勘違いした人も多くいたようです。

さて出版楽譜にはアンリ・ド・レニエ(1864~1936)の小説「ドゥ・ブリオ氏の出会い(1904)」から「無益な仕事に熱中する常に変わらぬ新しい喜び」という引用が題辞として掲載されており、一連のウィンナ・ワルツをラヴェル流に作曲したラヴェルの心境が託されております。

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管弦楽版は1912年にロシアのバレリーナからの依頼を受けバレエ「アデライーデ、または花言葉」のための楽曲としてわずか2週間で作られました。 バレエの初演は1913年4月22日、パリのシャトレ座でラヴェル自身の指揮で行われ、管弦楽としての初演は1914年2月15日モントゥー指揮、パリ管弦楽団によって行われました。

高雅で感傷的なワルツ♫~管弦楽

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ワルツ1 モデレ

↓楽譜は全てクリックすると拡大されます。

1

「高雅」なワルツでレントラー風のリズムで始まります。 この荒々しくきびきびしたリズムが当時の聴衆を驚かせました。 華やかな舞踏会を暗示しております。

ワルツ2 アッセ・ラン

2

第1曲とは対照的に優雅で甘いメランコリーを帯びた「感傷的」なワルツです。 端麗で憂愁を含んだ青年ロレンダが登場し、アデライーデとめぐり逢います。

ワルツ3 モデレ

3

エレガントなシューベルト風のタッチが添えられております。 マーガレットの花びらをむしって愛の占いをします。

ワルツ4 アッセ・アニメ

4

花占いが成功しそうなところへ、ライバルの金満家の侯爵が現れます。

ワルツ5 プレスク・ラン

5

侯爵はアデライーデに高価な贈り物をします。 「アンティームな気持ちで」の指示が付いているように、静かな夢と現実の境にあるようなワルツです。

ワルツ6 ヴィフ

6

侯爵の贈り物に眼を奪われたアデライーデに対するロレンダ青年の失望です。 猫のような身の軽さとしなやかさを持つワルツです。

ワルツ7 モアン・ヴィフ

7

侯爵はアデライーデに踊りを申し込みますが、彼女はロレンダ青年を選びます。 最も長いワルツで伝統的なA-B-A形式に設定されております。 ワルツの2つの特性の物憂げな面と華やかな面が総合されております。

ワルツ8 エピローグ:ラン

8

これまでの主題を精巧に結び合わせ、抒情的な美しさに満ち、優しく回想するように静かに完結いたします。 アデライーデと青年は結ばれます。

高雅で感傷的なワルツ♫~谷真子

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ぺルルミュテール

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阿部裕之先生

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パスカル・ロジェ

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ポール・クロスリー

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ギーゼキング

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フランソワ

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モニク・アース

私がプライベートで師事するラヴェルの演奏では定評のある阿部裕之先生が「高雅で感傷的なワルツ」のレッスンでお話された事を♪以前のブログ♪に書いております。 合わせてお読み頂ければと思います。

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