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ストラヴィンスキーの「兵士の物語」

MESSAGE(門下の方はどうか各自の答えを見つけてみて下さい。)

モーツァルトのクラビコードとピアノフォルテ

ストラヴィンスキー(1882~1971)の「兵士の物語」を聴かれた事があるでしょうか? 本来は「読まれ、演じられ、踊られる」ユニ-クな新しい音楽のジャンルですが、まずは聴かれた事のない方のためにバレンボイムの音楽にリンク致します。

ストラヴィンスキー「兵士の物語」♫~指揮ダニエル・バレンボイム

登場人物は語り手、悪魔、兵士、王女の4人です。 音楽は7人の室内オーケストラによって演奏されます。 音楽にはストラヴィンスキーの友人のスイスの指揮者アンセルメアメリカ演奏旅行から帰国した際ストラヴィンスキーに贈ったアメリカのラグタイムディキシーランド・ジャズの音とリズムの影響があり、ストラヴィンスキーがそれを彼独自の分析で作曲に活かしています。 

台本はアファナシェフというロシアの民族学者の書いたロシア民話集の中の物語からラミューズという小説家が執筆したものですが、第一次世界大戦の直後という時代背景もこの作品の誕生には大きく影響していたようです。

私の所有するCDはコクトー版と呼ばれるものですが、朗読と音楽でパフォーマンスが進んでいきます。 

ストラヴィンスキー兵士の物語コクトー版

(門下の方でご興味のある方はCDお貸し致しますので受付までお尋ねください。)

物語は休暇で故郷に帰る兵士の話ですが、途中悪魔と出会い自分のヴァイオリンと物欲との交換を持ち出されます。 それに応じた兵士は夢のような時を過ごしますが3日のつもりだったのが、実は3年経っていたのです。

周りの状況はすっかり変わっています。 時を悪魔に盗まれたと知った兵士は怒りますが、夢を手に入れた代わりに自分には愛がないのに気付きます。 兵士はすでに楽しんだ物欲をかなぐり捨てバイオリンを取戻し愛する王女も手に入れます。

全てを手に入れようとする兵士に語り手は 「すべてを手に入れる権利はないのだ。 それこそ禁断。 幸福はひとつで充分。 二つとなったら幸福などなくなったのと同じ事。」と告げます。 

しかし兵士は全てを手に入れようと今の自分と昔の自分の二つを手に入れるために王女を連れて昔に帰ろうとします。

答えはこの作品の中では出ていません。 

私は人間の欲望に優劣や貴賤はないのではないかと思っています。 ささやかな事でも自分が欲しいもの何か一つ手に入れられたら人間は幸せなのではないかと思います。 全ての欲望を手に入れる事は不可能なのではないでしょうか。 辛い事、大変な事、厳しい事、そういうやりたくない事はやらないで、楽しい事、嬉しい事、喜ばしい事だけを魔法のように手に入れる事ができるなら良いですが、何かを手に入れるためにはその何倍もの人知れない努力がいるのではないかと思っています。

+++追記+++ 

兵士の物語 ピアノ編曲版 楽譜♪~アカデミア・ミュージック

明日はINFORMATIONの写真のハイドンのシンフォニーについて書こうと思います。